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 隔年ごとの海外視察・研修旅行

 海外への視察・研修旅行も税制懇の特徴の一つ。1992年から始まり、隔年で実施しており、08年までに9回になります。この旅行は、もちろん観光も重視しますが、視察研修は通訳もつけて海外の行政機関や関係団体などを訪問、交流も図るという「まじめさ」が売りです。このほかに、中国やロシアなどを度々訪問し、中国には一定の交流ルートが築かれています。


 最近の海外視察・研修旅行の実施状況

 第10回目 2010年6月6日(日)〜15日(火)
      視察旅行先:北欧三国(フィンランド、ノルエー、スウェーデン)
      主な視察目的:税と社会保障制度について 
      参加人数  :29名
      視察の感想文

 第 9回目 2008年6月3日(火)〜11日(水)オーストリア、チェコ
      主な視察目的:各国の税制事情について   23名
      視察の感想文

 第 8回目 2006年 英国・アイルランド 29名
      主な視察目的:LLPの実施状況について
      海外視察レポート

 第 7回目 2004年 オーストラリア   32名
      主な視察目的:電子申告の実施状況について
            



第10 税制懇 海外税制視察の旅

北欧三国視察の感想  浅井優子(東京ブロック)


誰がために国家はあるのか
北欧を旅して思う−

 今回の海外税制視察は2010年66日から15日までの10日間、フィンランド、
ノルウエー、スエーデンの
3国について行なわれました。視察の具体的結果につ
いては秋季研究集会(2010年10月17日〜18日:名鉄犬山ホテル)に譲ります。
ここでは一旅行者としての私の若干の感想を述べてみたいと思います。

 10日間の視察期間中、政権が鳩山首相から菅氏に代わり、消費税率10%引上
げという菅首相の突然の発言が、参議院選挙の一大争点になっていました。

 折りしも北欧から帰ったばかりの私の脳裏には、これら3国の国民に対する国
家のあり方が強烈に焼きついていたこともあって、菅首相の消費税率
10%引上げ
発言の向うに、政策の欺瞞性と無責任と浅薄さを見ずにはいられませんでした。

 21世紀に入ってからの10年間で、私達の国日本は、収入200万円以下の貧困層
1000万人創出し、他方で無駄な電力の使用、ビル風、狭くなるばかりの上空な
ど、環境破壊の一つとしか思われない超高層ビルが日本の主要都市に林立するよ
うになりました。こうした結果に対する真摯な議論を無視して、消費税率引上げ
だけを指向する国の未来に、どうして希望など抱けるだろうかと思いました。

 ヘルシンキ、オスロー、ストックホルムには、こんなビルは1棟も見ませんで
した。歴史を思わせる5階建て程度の、古い建物を廻る狭い石畳の道路のゴツゴ
ツとした感触に、私は生きていることを実感するような落ち着きを感じました。
そういう古さと一緒に市民は生活しています。古いために使い勝手が悪い、危険
だなど問題は生じていることもあると思いますが、簡単に建替えたりしないで使
い続ける「無駄」を受忍するところに、これらの国の豊かさを思いました。賃金
水準は高くその
3割から5割は税金と社会保険料など負担。しかし社会保障制度が
充実しているので、残りは貯金せずに消費に回す。消費税率の基本税率は
25
(食料品は
12%)。物価は3国とも大変高いというようなことは良く知られてい
るところです。

 3国の人口はフィンランドとノルウエーがそれぞれ約500万人、スエーデンが
1000万人と聞きました。このことが新自由主義経済政策を進めながら、同時に
社会保障制度を充実させている一つの要因ではないのだろうかと思いました。人
口問題は国が資本のためにではなく国民のためになければ、国そのものが消滅す
ることを示しているのではないかと思いました。

今回の北欧3国の旅は、変わろうとしている時代に、「誰がために国はあるのか、
その答を皆が求めていると私は思いました。 (あさいゆうこ)






 オーストリア・チェコ 9日間  08年6月 
       9回 税制懇 海外税制視察の旅

   オーストリア・チェコ
9日間の感想


                                    浅井優子(東京ブロック)

 総勢23名(団長・福田悦雄さん、事務局長・青木輝光さん)、63日(火)AP1015分、雨の中を飛行機はウイーンへ飛び立ち、旅がスタートした。

私の知っているヨーロッパの町はパリとあと幾つかの町だから、余り知ったかぶったことはいえないが、それでも痛感するのはヨーロッパの圧倒的な存在感であった。ウイーンもプラハも例外ではなかった。明日はこの町から消え去って行く旅行者に、私達はここに生きているという主張が耳元に聞こえてくるような迫力を感じた。

オーストリア、チェコ共に財務省で、税制の現状と今後の方向性についてレクチャーを受けた。両国はEUに加盟している。今回受けたレクチャーでは大雑把にいって、次のような視点で整理してみることに興味が湧いた。

1.EUは福祉を捨てるのか

2.消費税と福祉予算はEUにおいて切り離されているのか

*オーストリアの消費税率は20%と10%である。法人税率を35%から25%に引き下げた。医療費は上がったがこれは高齢化によっている。法人税率の引き下げとは関係ないと回答があった。

*チェコの消費税率は19%と8%。消費税率の引き上げによって物価は3%上がった。

3.個人所得税のフラット化、法人税率の引き下げ、消費税率の引き上げなどEU加盟各国の競争はオーストリア、チェコにおいて経済の活性化をもたらしているのか

     法人税率をオーストリア25%、チェコ24%に引き下げた理由は、自国内にEUの事業所を呼び込むためである。オーストリアでは法人税収が上がったと回答あり。

     チェコでは累進の所得税率を12.5%とフラット化し、社会保障費を課税することで課税ベースを拡大した。

 オーストリアではザルツカンマーグートという避暑地の町に一泊した。カタリという音もしない静寂だけが沼と牧場を覆っていた。チェスキークルムロフというチェコの町は14世紀の街並が今も残る。朽ち果てた町を磨き上げて現状に復活させた歴史はまだ浅いらしい。EUは経済の新自由主義化をどこまで進められるのだろうか。国民が簡単に許しはしない、町を見ているとそう思うのである。(浅井優子)





                                   英国・アイルランド訪問レポート
 英国・アイルランド訪問レポート  2006年


  イギリス、アイルランドの
    
税制度・税事情を視察してきまし

          報告者  青木輝光(東京ブロック、税制懇事務局長)


T はじめに
 第8回全国税制懇話会海外視察研修は、2006年6月3日から11日の九日間かけて、イギリス・アイルランドの両国を訪問しました。参加者は30人でした。視察先は、5日午前「女王陛下の国税庁(ロンドン)」、午後「法人登記管理所(ロンドン)」、6日午前「アイルランド租税協会(ダブリン)」、7日午前「アイルランド国税庁(ダブリン)」の4ヶ所です。いずれの訪問先も大歓迎で、資料を含めて丁寧な説明がなされました。
特にアイルランド国税庁は、予定を2時間以上もオーバーするほどの熱の入れかたで、国税庁側からの記念撮影も行われました。この報告は視察の際の説明を中心としたものです。
 なお、訪問した日から連日25度前後の夏日となり(それ以前は雨模様でストーブがいる日々であったとのこと)、「日本から夏を運んでくれた」と喜ばれたことも報告しておきます。

U 女王陛下の国税庁
 「女王陛下の国税庁」は、国会議事堂近くの首相官邸の隣にあり、視察はチャーチル氏が第二次世界大戦で大群を前に勝利演説をしたというバルコニーのある由緒ある執務室で行われました。対応者は、ランス・レイルトン国際部マネージャー、リンダグラント有限責任事業組合(LLP)担当主任でした。

1、「女王陛下の国税庁」
税務行政機構は、関税・消費税庁(付加価値税等)と内国歳入庁(所得税、法人税、社会保険等)に分離していたが、2005年4月21日統合国税庁に組織変更された。

2.付加価値税(VAT)
 VATは、1991年EU加盟の条件として導入した。税率は、英国全体への影響、他税目との関係等含めて考えたもので、EU内では中間レベルとなっている。
 @標準税率 17.5%
 A軽減税率 5%(家庭用燃料、電力等)
 Bゼロ税率 0%(食料品、子供服、新聞書籍、医薬品、国内旅客輸送等)
 軽減税率・ゼロ税率は、政治的配慮で導入したものであるが、EU内では隠れた補助金との批判もある。ゼロ税率は、必需品への配慮であるが、食料品といってもチョコレートやアルコール、子供服でも毛皮服等は該当しない。また、非課税範囲として、金融・保険、医療、教育、葬儀等がある。

3.直接税
 所得税(所得税・法人税)
 所得税は、1799年ナポレオン戦争の時提唱され、1802年導入、1816年に廃止されたが、1842年に復活し今日では税制の根幹を担っている。源泉所得税は、1944年に導入。租税収入の31%を直接税で占めている。
 法人税は、1840年から50年代に企業が設立・登記されたのを受けて、所得税と同じ枠組みで課税してきたが1965年に導入し、企業の収益やパートナーシップの収益に課税している。パートナーシップには2つの形態がある。無限責任を負う組織で、投資家がパートナーとして投資する。州によって法人格の有無が違うが(イングランドウエールズは法人格なし、スコットランドは法人格有り)、同じように課税される。

4.有限責任事業組合(LLP)
 LLPは、2000年に法整備し導入した。LLPは法人格を持ち、メンバー全員が有限責任であり、柔軟な組織構造をもつ組織であるため、登録・登記し、会計書類を提出する等透明性が確保されなくてはならない。2001年以来、18,000件を超えるLLPが登録されており、大規模事業から小規模事業まで様々ある。活動している事業は100万件を超えており、内50万件はパートナー形態(実際は小規模が多い)である。
 弁護士、会計士等の専門職にLLP希望選択が多いが、税制上は優遇も不利な取扱いもしないという考え方で対応している。LLP導入後1年目は100件規模しかなかったが、大手の会計会社、会計士のプロがこの制度をいいと思い勧めたのが伸びた原因と思う。また、移民(ウガンダー少数民族・ハンガリー人など)の増加により、資本金を持たない専門職によって選択された。
 課税は、法人でも個人でも選択できたが、現在では組合(個人)課税となっている。18,000件事業体の内、個人課税は90%を占めている。それは他の組合との均衡から、投資(不動産)、債務返済、独自資産の処分、非営利のクラブ・協会等は、LLPであっても法人として課税している。
 課税は、@収益はパートナーレベルで算出されているか、A構成員分配はアレンジにのっとって分配しているかB分配に応じて個人個人に課税しているか等、3段階方式でチェックしている。申告・調査機関は、大規模LLPはラージビジネスサービスで、小規模LLPは地方支局で対応している。
 LLPメンバーは共同・参加型だけではなく、出資だけのパートナーも可能であり、課税上も個人に課税される。
 損益の分配はパートナーの合意で自由に決められ、課税もそのままでいく。また、分配を変えても過去の収益に遡ることはない。
 損失の分配も可能であり、損益通算される。ただし、上限があり出資額がその限度である。法人の場合も同様であるが、損失は繰り越され翌年のLLP損益のみ通算される。

5.税務代理行為
 誰でも税務代理をすることができる。しかし、責任をどうとるのかが絶えず問われており、結果として税務代理は、勅許会計士、弁護士が行っている。

V 法人登記管理所(Companies House)
 CHは、貿易産業省に所属し企業や組合の登記・管理とともに、登記されている法人や組合の情報公開が適切に行われているかどうか調査し監督をする(日本でいう独立行政法人形態)。本部はイギリス・カーデイフにありますが、視察はロンドン事務所で行いました
対応者は、ニール・バトラ一国際関係マネージャー、リー・ロビンズLLP担当マネージャーでした。

1、事業内容
 職員数は全体で1,000名、1844年にスタートし、法人法(企業法)や行政立法をもとに法人を管理する事務所。パートナーシップ法(有限責任組合法)に基づきLLPも管理している。民営化されており、収入は有料手数料、情報提供料などで年間5,000万ポンド(罰金収入は含まない、日本円で約100億円、1ポンド200円)ある。
 事業計画は、運営委員会(政府代表と民間代表で構成)で方向付けを行い、大臣レベルの承認を経て英国国会を通じて一般公開される。
 登録会社は、200万件を超えており、各種届出書類は700万件を超えている。法人に対する独自調査は実施しないが、調査部を設置し、英国貿易投資省と英国国税庁と連携して法人内容を調査し、罰金命令や解散通知など強力な権限を内存している。

2、LLP
 LLPは、専門職の無限責任への懸念から、会計士、弁護士、とりわけ大手6社の会計事務所が中心となり積極的なロビー活動を展開し、2000年に議会法として成立させ、2001年4月6日に施行された。LLP登録は、先週(2006年5月末現在)で2万件目を超えた。登録件数の内5%は会計、弁護士の専門分野で占めている。
 LLP登録費用は、95ポンドから20ポンドに変更されている。
 企業とLLPの違いは次の通り。

           企 業         LLP
  株式投資     あ り         な し
  役  員     あ り      専任か非専任かに区分
                   (専任は会計報告義務あり)
  提出書類     多 数        LLP2で一体化
  課 税      法人税         組合税(個人)
  海外企業     支店登録        支店登録なし

 LLPに証書を先行、バーロナーシップ番号を付与する。
、LLPの提出書類は次の二つ
 @ 年次提出報告書(法律事項) 到達後28日以内に返送
 A 会計報告  立ち上げた1年後の月の末日
 会計報告は、有限責任と密接不可分、強力な申告遅延罰則金が課される
会計申告遅延罰則金は次の通り。
 @1月 〜 3月内  罰金   100ポンド
 A3月 〜 6月内  同    250ポンド
 B6月 〜12月内  同    500ポンド
 C12月以上      同  1,000ポンド
 2005年度のLLPの罰金合計 2万社 20万ポンド
 年次報告、会計報告未提出の場合は、組合員に催告書を郵送する。
 裁判になった時は最高5,000ポンドの罰金が課される。
さらに、事業運営停止処分、解散命令処分がある。
 @ 任意解散 官報に掲載、5ヵ月後解散
 A 抹消・除名解散 官報に掲載、6ヵ月後抹消

W アイルランド租税協会(ITI)

 港湾開発地域に事務所を置いている。会員は3.000名で政府からの援助関係は一切ない非営利団体、21名の評議員で運営している。会員の40%は会計事務所が占めている。納税者を代表して、税運営に関する連絡委員会(国税庁、会計事務所、弁護士等で構成)に参加している。対応者は、マーク・レイモンド最高責任者でした。

1、アイルランド概況
 アイルランド人口は430万人、1860年以来最大の人口となっている。経済成長に伴って移民が流入、EU諸国から75万人が入ってきた。2005年度も経済成長率5%前後で推移しているが、これは外資導入を重要な国家戦略として採用してきた結果である。
ただし、この戦略はEU外資導入10%適用目安からみて批判も多い。

2、主要税目と税率及びコメント
@ 所得税 42%と20%の2段階
A 法人税 経済成長時10%、2000年に改定し現在は12.5%
B VAT 標準税率 21%
      軽減税率 13.5%(不動産、建築等)
      ゼロ税率   0%(食料品、子供衣料品、はきもの、新聞書籍等)
 C 資産税・相続税 20%
 ATゼロ税率導入は政治的判断であり、法人税率を下げる方向はEU諸国共通の考え方で、スロバギアはさらに低い。
 企業、自営業、副収入のある自主申告納税者は20万件、他に200万人の非雇用主の収入源(源泉所得税)がある。

3、国税庁関係
 アイルランド国税庁は、2003年に組織改革を行った。職員数6,000名、国税庁組織は理事3名のもとに、4地区部、大企業部(LCD)と検事局を設置し、強力な調査権限と訴訟指揮を行っている。しかし、訴訟は立件の困難性があり、有罪判決をとるのは難しい状況にある。
 LCDは、350法人と300個人を直接掌握し、その税収は歳入の66%を占める。LCDはコンプライアスマネージャーを配置し、各企業を管理している。LCDの強力なアプローチで、各企業はコンプライアンスを守るためのタックスプランニング作成などの合意を迫られている。
 オンラインシステムはほぼ整備され、申告漏れがないようリアルタイムで監視されている。オンライン活用状況は、所得税65%、法人税42%に達している。オンライン活用のメリットとして、申告期限3週間の延長、迅速な還付が上げられる。
 最近の傾向として、国税庁が納税者と直接接触する機会を増やしている。これに対する納税者の反応は2分化している。予期しない納税がなくなると歓迎する意見もあるが、アドバイザーを通して申告しているから必要ないという意見もある。
 調査は、3週間前に事前通知がある。立会いに誰を選ぼうが自由である。
過少申告の場合罰則はあるが、怠慢、詐欺行為(脱税)の場合は重い罰則となる。ただし、自主修正の場合は罰金の軽減がある。
@怠慢の場合10%〜11.75%の利子、最大100%の罰金、全国メデア公開
A脱税の場合 重い罰金と5年の禁固刑、全国メデア公開

4、租税協会
 協会の主要な事業として、税制度や納税者の権利が守れないことに対する政府の責任について提言を行っている。協会の理念は、「平等の理解認識のみなもと」「知識のともしび」として、納税者に対する知識のアドバイザーを掲げている。

 TAXアドバイザーを養成しており、3年資格者と1年資格者に対して協会の認定書を交付している。誰でも受けられるが、大卒レベルの受験者が多い。TAXアドバイザーは、税務申告はするが納税者に代わって苦情の申し立てはしない。

5、納税者権利憲章
 1989年の納税者憲章廃が、2004年に改定されたが、今回の納税者憲章をよいとは思っていない。それは、われわれの意見も聞かず一方的に作成され、かつ、国税庁側の期待するもの(調査や情報提供の協力など)、納税者の義務を先行
させているからである。
 苦情処理システムがなく、オンブズマン制度を要求している。しかし、納税者のこれに対する認識が弱いのも事実である。
 機会があれば、日本の納税者団体とも交流したい。

X アイルランド国税庁
 世界遺産ダブリン城内に総督府・国税庁が置かれており、歴史ある建物内の会議室で行われました。最新版「2005年AnnuaiReport(英語・ゲイル語版)」を贈呈される。対応者は、パデイ・ライアン戦略計画部・海外広報責任者、シーマス収入税検査部担当者、デイブ・ハーデマン間接税・付加価値税相談室担当者、ジェリー・レオナルドオンラインサービス部担当者でした。

1、組織概要
 アイルランドは1923年イギリスから独立した。国税庁は税金・関税の徴収以外に、オンラインサービスによる他省庁の業務(農林・厚生省等)も代行している。理事は3名(理事長、長官、局長)で、理事長は大蔵財務大臣に業務内容を毎日報告している。機構は4つの局とLCD局で構成され、職員数は6,500名である。
 2005年の歳入規模は542億ユーロで、この10年間で2倍以上増加している。課税項目別に見るとVATが歳入のNO.1となっている。労働人口は225万人、企業数は63万5千企業に達している。

2、監査(調査)システム
 監査の流れは、@自己申告、A税務監査、Bリスクマネジメント、C監査プログラム、Dスペシャルコンプライアンス、Eペナルテイ、F監査システム、Gプロジェクト、Hテクノロジー、I統計となっている。
 自己申告は、正直なものとして受理するが未申告者にはペナルティを課す。
リスクマネジメントは、リスクの高いもの(海外在住者、非居住者、投資など)に焦点をあてた監査で、銀行に口座などの開示要求を行っている。
 監査プログラムは、@包括的監査、AVAT・社会保険税監査、B免除・非課税システム監査(映画製作プロジェクトなど)、Cアシュアランスチェック(電話による確認事項・関税業務など)に区分している。
 2005年の監査結果は次の通り
 @ 自己申告監査      5,077件 歳入   3億2千ユーロ
 A 税務監査        1,220件 歳入  5千2百万ユーロ
   単独監査        6,173件 歳入 1億2千3百ユーロ
 Bリスクマネジメント    1,744件 歳入   2千7百ユーロ
 Cアシュアランスチェック 98,981件 歳入    5千万ユーロ
 全体合計         14.214件 歳入 5億2千5百ユーロ

3、総合監査と電子監査システム
 2003年の機構改革を機に総合監査を導入、4つの局を中心にリスク分析を行っている。リスク分析は各地域毎にプロジェクトを編成し、例えば、建設業なら業界の慣行・入出金の流れなどを分析し、脱税や租税回避対策を実施している。イベント開催者については現地などの活動、インフラ整備に関連して道路、輸送、大型ショッピングなどの活動を把握していく。
 電子監査システムを導入し、監査対象の選定に活用している。その内容は、4〜5年の財務情報分析に第三者機関の情報、業種の行動パターンを加味し、リスクのランク付け(年4回)を行う。
 監査は事前予告し、相手との合意が成立して行う任意調査がほぼ主流を占めている。
 監査聴員は1,100名であるが、監査職員を増やすのが当面の課題である。今建設業がGNPの25%を占めており、2006年度はこの業界に監査職員の25%を配置する予定である。
 ランダムな監査も実施している。それは、法を守っているか、誰でも監査対象になる、リスクアセスが有効であることを示す上でも重要である。
 オンライン申告も普及しており、所得申告者の約7割が活用し、内約8割が正しい申告をしている。

4、VAT
 VATは1972年EU連合加盟と同時に導入、EU内の物流、買収は内部取引であり、EU外は輸出入取引となる。商品やサービスを受けた本人が、あたかも自らがその商品やサービスを供給したかのように、VATを計上することもある。納税義務者は、商取引・サービスを提供する人で、ノンタックスは、政府関係、チャリティ、宗教、消費者と定義されている。課税は、EU内原則である提供する場所で課税される。
@ 課税標準  21%
A 軽滅税率13.5%(建設、ホテル、外食産業、不動産、電気等の肉体産業)
       4.8%(家畜取引、特定農家の商品)
B ゼロ税率 社会的理由と商業的理由で区分
  社会的理由 食料、薬品、子供服(10歳まで)、書籍など
  商業的理由 輸出、食糧を育てるための種など
  非課税対象 医療、教育、保育、金融、保険、文化サービスなど
ゼロ鋭率、非課税を導入した理由は次の通り。
@政治的理由 EU法律、政治的圧力、環境、国際協力など
A事務・運用上の理由 コンプライアンス、法的枠など
VATの利点は次の通り。
@現金の流れの把握、A監査の減少、B監査のための企業負担減少、C政策的には、国内商業活動の活発化、よりよいサービス、運営上の効率などが上げられる。
免税業者 サービス業以外 年間売り上げ 55,000ユーロ以下
     サービス業者     同   27,000ユーロ以下

5、オンラインサービス
 オンラインサービスは、電子政府プロジェクトとして実施している。対象は、250万納税者、50万の自営・企業で、電子的に税金を徴収するシステムであり、安全・守秘義務を徹底して24時間サービスを行っている。
 主要なオンラインサービスは次の通り。
@ オンライン申告 VAT、報酬源泉税、源泉税、法人税、所得税、環境税、自動車税、印紙税、登録税、輸出品目処理、EU内農業手続き等の20項目
オフラインでの申告・還付も可能
A 電子マネー、オンラインバンキング
B インボイス記録7年間保存
C アクセスサービス24時間保証
D 安全性 PKIシステム(識別認証機能、デー夕ーの確実性判断、アクセス機能)の導入
オンラインサービスのさらなる改革をめざしている。
@ 情報処理の促進、より迅速なサービスの実施
  現在の処理件数 文書 400万件 電話 400万件 問合せ100万件
A 2007年までの5年間戦略
  企業と契約し、基本的には電子取引や企業の従業員の給与等にも拡大したい
  目標 自動車登録税  98%(現在 87%)
     関税      95%
     自営業者中告  75%(現在 65%)
     法人税     85%(現在 42%)
  国税庁オンライン職員 30%増

Y まとめ

 今回の視察をより充実させるために事前に質問内容を整理し訪問先に提出していましたが、視察時間や通訳を介しての説明等のため、内容のすべてを聴取するには至りませんでした。しかし、LLP、VATに関する事項や、初めて知ったアイルランドの税制・税務行政など、多くの実りある成果をつかむことが出来ました。

1、LLPについて
 日本版LLPとイギリスLLPの法的違いは、法人格の有無、パートナーの範囲士業参加の有無を除いては、有限責任、柔軟な組織構造、損益の分配等含めてほぼ同一内容であり、日本版LLPがイギリスLLPを模倣したものであることが解明できました。
 イギリスでは、LLPが社会的存在として認知され、経済の活性化に寄与し、活用する事業体が2万件を超えさらに拡大する傾向にあります。一方、日本では導入直後という事情はあるにしても依然として活用事業体は100件程度に留まっています。この原因が、専門職である税理士、会計士、弁護士等を排除していることにあることもイギリスの経験から推察されます。
 多様な業種の活用を促すなら、日本版LLPに法人格を付与すること、投資だけの参加型パートナーを認めること、士業の無限責任を改め参力を認めること等の改定が必要ではないかと痛感しました。

2、会計情報開示について
 イギリスでは、LLPを含む登記されている事業体のすべてに会計報告が義務付けられています。それに違反した場合には強力な罰金制度や事業運営停止・解散命令があることを知り、会計情報の開示が事業体の社会的責任になっている実態を目の当たりにしました。「会計報告と有限責任は密接不可分」という担当官の説明に改めてショックを受けました。
 日本では、有限責任である株式会社等は決算公告が義務付けられていますが、公開会社等を除くと圧倒的多数の会社がこれを守っていない現実があります。新会社法に関する国会審議では、法務大臣が決算公告義務を強化する旨の答弁を行っていますが、私たち自身が事業体の社会的責任、透明性の確保等の観点から、どう対応していくか検討する必要があるようです。

3、VATについて
 イギリス、アイルランドともに標準税率、軽減税率、ゼロ税率という複数税率構造を採用しています。さらにアイルランドでは、軽減鋭率が2段階となっています。
 ゼロ税率は、食料品、子供服、新聞薯籍等生活必需品として最低限度の生活・文化を支えています。ゼロ税率については、EU内でも独特の制度ですが、導入の理由については、両国担当者も「政治的配慮で導入したもの」と発言しています。非常に意味深長な言葉ですが、低所得者への配慮、国民の生活を守るという政治的信念の表れと受け取りました。
 日本では、福祉目的税などの口実で消費税率の二桁化を狙う国会議員が多数派となっており、税率引上げは予断を許しませんが、その際単一税率の愚行だけは避けなければなりません。軽減税率やゼロ税率導入の背景、理由、実態等について、さらに立ち入った研究が必要と感じました。

4、アイルランドの税制と税務行政
 アイルランドは、度重なる戦乱に大飢饉などの災害が加わり、国民の多くが移民として諸外国に流失した歴史をもっています。しかし、積極的な投資融資戦略(中心は法人税率10%と資金の自由化)が功を奏し、1990年代に飛躍的経済発展をなしとげ、現在も経済成長を続けています。今日では、情報通信技術、ライフサイエンス、エンジニアリング、国際貿易・金融サービスでの主要国へと発展しており、ダブリンではその息吹が感じられました。
 アイルランドの税制については、アイルランド大使館から「アイルランドの税制(資料(E〜L」をいただいていますので参照して下さい。
 税務行政については、電子政府プロジェクトであるオンラインシステムと結合した監査システム(総合監査、電子監査を含む)が機能しており、脱税や租税回避対策が強力に行われていることがうかがわれた。
 とくに、オンライン申告では、VATや法人税、所得税など20項目が対象となっており、自営業者申告では65%、法人税では42%の企業が利用している。また、行政分野だけでなく、民間企業の電子取引や従業員給与等にも拡大する戦略を立てており、電子政府プロジェクトの全体の概要やオンライン申告システム、情報管理システム等について、さらなる実態研究の必要性を痛感しました。

5、アイルランド納税者憲章
 アイルランドの納税者憲章は、国税庁の意向が前面に出ており、租税協会の評判はよくありませんでした。アイルランドの国税庁の強力な監査システムに対して、納税者の立場が弱いのではないかと推測されます。それは租税協会最高責任者の「苦情処理システムがなく、オンブズマン制度を要求している」という発言にも表われています。租税協会との交流をさらに探める必要があります。
 以上が視察内容の概要です。丁寧な説明をされた各対応者に改めて感謝を申し上げます。
また、視察先へのアポイントや全日程に同行された兜x士ツーリストの金沢克彦氏、納税者憲章を翻訳された公認会計士秋山順氏のお礼を述べて報告とさせていただきます。



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